
ストロングキャリアには、「AIデータサイエンティスト」からのプライベートエクイティ転職相談を受けることも多い。
IBMやITコンサル出身者だったり、海外大学院留学中だったり様々だが、そのような「AIデータサイエンティスト」からプライベートエクイティ転職は可能なのだろうか? ないし、そもそもそのようなキャリアチェンジはお勧めできるのだろうか?
AIエンジニアも、日本では20代そこそこの時は600万円程度の年収なので、バイアウトファンドに転職すれば少なくとも2倍は目指すことができるが、その実態を以下で見てみこう。
「AIxバイアウト」案件、その中身は…?
まず、複数のファームが「AIxバイアウト」を軸にしたマーケティングを始めている。
その最たる例がDキャピタルだが、二号ファンドで600億を超え、その創業者の古巣のXXXXキャピタルのサイズに迫る勢い(次号ファンドではおそらく超える)である。
他にもインテグラルなど大手のバイアウトファンドの中には、ファームの有志が集まり、投資先のDXを通じたバリューアップを推進しようとしている。
ただ実際のところ、「バイアウト案件で作り出された株式価値の大半がDXによってもたらされた」という事例は寡聞にして聞かない。
これは、DX推進によるマージン改善効果より、そもそも不要なノンコア不採算事業を閉じたり、不要な商品ラインを整理して売れるポートフォリオに変えたり、出店戦略を見直したり、地道にレバレッジ返したりといった厳選のほうが、いまだよほどインパクトが大きいからともいえよう。
「DX案件エグジット」と聞いてよくよく中身を見てみると、大半はたんなるバイアウト案件で、「お化粧程度にDXやりました」系の案件も少なくないのだ。
オーソドックスな基本を押さえて、「おまけのスパイス程度」に織り交ぜる
したがって、あまり「AIエンジニアのバックグラウンド」を押し出しても、プライベートエクイティ転職の面接において特に強みとはならないだろう。なにせ、外部のAIコンサルに外注したらいいだけの話なのだから。
したがって、あくまで、オーソドックスな「なぜバイアウト?」「なぜミッドキャップ?」「なぜ弊社?」「ところでLBOモデルは回せるの?」「少なくとも3票連立モデルはできるよね?」という基本を押さえたうえで、「おまけのスパイス程度」に織り交ぜるのが正しい塩梅と思われる。
PS しかしながら、一時期ESGファンド(その大半は中身空っぽ)が、ESG好きの一部の投資家から資金を集めたように、「DXを推進しなさい」という政府の号令の中で「うちもDX投資しなくちゃいけないな」という資金を狙いに行くときのチーム構成として看板になるくらい立派なAIバックグラウンドであればこの限りではないが、それならば西海岸の大企業に入ってアマゾンでレベル8のマネジャー目指したほうが、よっぽど実入りはいいのである。