東京大学教養学部Iさんより質問
私はコンサルタントで自分の能力を磨いた後、公益のポジションに就きたいと考えているのですが、コンサルタント→公益的な仕事というキャリアパスを描く人は実際にいるのでしょうか?
講師による回答
コンサルと公務員の往来は結構盛ん
たくさんいます。実際公共の現場からコンサルに来る人を私は多く知っていますし、逆もしかりです。厚生労働省や外務省から戦略コンサルに移った友人も数多くいます。
彼らのやめるパターンは、昔は次官の道が閉ざされと外部に流れるというものでしたが、今ではそもそも官公庁の低下していく役割に魅力を感じず、分厚いヒエラルキーと出世への長い道が嫌になって辞める人が多いです。
決して尊敬できない人が出世したり、どれほど優秀な人財でも後輩というだけで雑用ばかりやらされたりと、その待遇は決して恵まれたものではありません。
また給料5倍で実力次第で早期に出世できる外資系の同期の存在も影響しています。
ひとことで言えば、官僚の相対的魅力の低下が原因でしょう。
外資系で頭角を現しても、政治で沈没する人も多い
報酬はさておき、“世の中にインパクトを与えたい!”との希望に燃える学生さんの中には、まずは民間の外資コンサルで実力を養って、そこから公共政策に、、、という人も存在します。
実際に現在の内閣や政府高官の中にも、所謂マッキンゼーマフィア、BCGマフィアは数多く存在します。
ただし残念ながらこれらのキャリアのお蔭で政府で頭角を現している人はあまりいません。例えば某大手米系投資銀行の東京支店長まで務めた人材でも、政治の世界では鳴かず飛ばず、という事例も記憶に新しいです。
これはひとえに、「あるべき論」「効率」「成果」「論理」(そして勿論、社内政治)が重要な外資系カルチャーと、金と人情と既得権益の世界の政治では、折り合わないものも多いのでしょう。
マッキンゼーはフラットカルチャーで誰が言うよりも何を言うかが大切だった、、などと言っていたら、「まだまだ私は雑巾がけです!」などというのが好まれる政治カルチャーでは、生き残っていけないのです。
実際の市場を知ったうえで、公的な仕事に就くメリット
公共機関につながる民間でのキャリアをアドバイスすると、最近投資銀行のIBDや株式調査部、ストラテジストの友人が、政策審議会などに御呼ばれされるケースが増えています。
株式調査部のアナリストをやると、業界共通の問題点、グローバルな競合会社とくらべた日本の政策的問題点などが、各社マネジメントに対するヒアリングを通じて声を吸い上げられる機会に恵まれます。
よってあなたがリサーチアナリストになって、マネジメントインタビューの際におなじみの四半期の財務数値ばかり聞くのではなく、政策的な問題点やインプリケーションを集積すれば、政策立案やその時の人脈形成という意味でも、貴重なファーストステップとなることでしょう。
民間金融から公的な転身の大きな事例は、GPIFのCIO任命でした。CIOに任命された方は、いきなり世界最大のペンションのトップにつくようなご経歴ではなかったのですが、これは既に業界外でも有名ですので書きますが、世耕議員が強く押して、塩崎さんおよび厚生省の反対を押しのけて、世界最大の年金基金であるGPIFのトップに就任したのでした。
いまの政権が変わればすぐに変えられてしまうかもしれませんが、それでも肩書は「元・GPIFのCIO」です。この大きな肩書は生涯ついてまわるわけで、それだけで一生”食い扶持”には困らないことでしょう。
ポリティカル・アポインティーの機会も増えている
ともあれ、コンサルタントなどのプライベートセクターで働かれてから、ポリティカル・アポインティーのような形で公的機関に任用されることはたくさんあります。
ただし待っていて機会が回ってくるわけではありません。
ご自身で主体的に政治家との勉強会やネットワーキングに顔を出され、有力な議員ないしその側近に気に入られて押してもらってこそ、そのような機会が回ってくるのです。