◆Question (早稲田大学法学部の方よりご質問)
新卒で戦略コンサルタントのプロジェクトに携わる場合、実務経験や現場感覚がないので顧客の本質的な悩みを理解する事に苦労すると思います。
そのような感覚や経験の不在を補い問題を解決するための工夫があればお聞きしたいです。
◆Answer (講師より回答)
これも学生さんが抱きがちな、典型的取り越し苦労です。最初に回答しますと、まず第一に、経験と関係ない気力で勝負しましょう。モティベーションの高さ、長時間労働、経験なくてもファクトで勝負できるリサーチ系の仕事で期待値を上回りましょう。
第二に、チームワークへの貢献で勝負です。コンサルプロジェクトは一人で価値を出すものではないので、チームの生産性を上げられるよう意識しましょう。
顧客の本質的な悩みを理解するという作業もあなた一人でやるのではなく、パートナー、シニアコンサルタントを巻き込んだチーム作業として行われるのです。マネジメント能力やスキルが無くても、比較的安い単価で調査や資料作りをガリゴリやってくれる若手コンサルタントは、プロジェクトの質を高めるために不可欠なリソースなのです。
第三に、優秀な若手コンサルタント特有の成長の早さです。これは、生産性の高さにもつながります。
実務経験や現場感覚が無いのを承知でコンサルティングファームが皆さんを雇うのは、それなりにメリットがあるからです。それを一言でいうとズバリ、単価が比較的安く、モティベーションが高く、汎用性の高い基礎的な能力(思考力・記憶力・調査能力・コミニュケーション能力)が高い上、深夜まで元気に働いて、資料を一生懸命つくってくれるのが新卒のアナリストのみなさんなのです。
言い換えればこの作業を30超えても同じモティベーションで何年間もできる人などそうはいないので、だからこそ数年ないし30前半でコンサルを引退する人が多いのだとも言えるでしょう。
ジュニアコンサルは実務経験ではなく、汎用性の高い基礎的な能力の高さとコミットメントの強さで勝負
ジュニアコンサルに求められているのは特定のスキルや経験ではなく、汎用性の高い基礎的能力、そして成長の速さです。
コンサルのプロジェクトには、顧客の期待値を調整し、プロジェクトの成果に責任を持つディレクター(or シニアマネジャー)、実行部隊の責任者であるマネジャー及びコンサルタント、その下に、彼らが切り分けた調査タスクを振り分けられるアナリストないしジュニアコンサルタントで構成されるので、アサインされた調査作業をゴリゴリ現場で回してくれる、深夜労働もいとわない若き精鋭への需要は常にあります。
また調査モノのプロジェクトをやらせるのも、経験をつんだコンサルだとやる気がしないので(既に何度もやってるため、追加的学習カーブが低くてモティベーションを感じない)時、常に未経験のフレッシュな、だけど頭のいい(次の段階に成長して高い時給をチャージできるようになる)人材が必要なのです。
コンサルプロジェクトにはこのような作業をモティベーションと完成度高くこなしてくれる人材が必要であり、ジュニアコンサルの仕事もコンサルプロジェクトの完成度の為には不可欠な要素なのです。
何より大切なのは、「早く成長して、会社の看板背負ってくれそう感」
そしてもちろん、より高いチャージができる仕事をこなせるよう、コンサルタントとしての成長の速さが重視されるのは、言うまでもないでしょう。
ファームとしてはファクト収集から、課題を抽出し、原因を分析する軸の設定、顧客の期待値まで資料に落とし込む能力、顧客にデリバリーして満足させる能力Etcを身につけて、最終的にはプロジェクトを回し、セールスとしてケースを売ってくれるようになることを望んでいるので、そのようなスキルを身につけていかなければ上に上がれません。
皆さんはこのような最初の調査フェーズから徐々に顧客との折衝を増やしていき、経験値を高め、時に顧客の現場で膝をつき合わせながら一人前のコンサルに成長していくのです。
重ねて言いますが、ご安心ください、あなたに実務経験がないのはコンサルファーム側も100も織り込み済みです。余計な心配なさらず、若手コンサルタントとしての汎用性の高い基礎的能力(吸収力、理解力、正確さ、構造的思考、協調性etc)をアピールしつつ、将来的に一人前のコンサルタントとして成長する速度が速いことが重要なのだと心得ましょう。
逆に言い換えれば、なんとかやっとこさいわゆるトップ大学に入ったものの、学習能力が高いわけでもなく、詰込み努力で時間かけまくって頑張りました型の人は、考えどころです。
総合系や下位ファームでデジタライゼーション戦略といいつつよく見るとSAPの導入ばかりやっていた、という仕事ならまだしも、マッキンゼーなどを目指すのならば、そもそも学習速度が速いうえ、昼夜忘れて仕事に没頭するライバルに勝てるのか今一度考えて、コンサル志望を検討するのも大切な視点だと言えるでしょう。