私は、米国大学出身の帰国子女。卒業後米系の外資系証券株式部門に入り、トレーダーと法人営業を経験した。一度「ボーナスギャランティ」に目が眩んで同業他社(同じく米系外資)に移ったが、それでもトータルで4年という長いのか短いのか今ではよくわからないキャリアでの社会人人生の幕開けだった。
「お金のためだけに生きるのは人生勿体ない」、という高邁な人生観を掲げていた当時の私は、その後退職して再度渡米し、米国で大学院留学をした。その後「知的な仕事」を売りにする某アドバイザリー系のファーム(世界中に知られる超権威のファームだが、敢えて社名は伏せる)に就職した。NY採用で、Expat(海外から日本への駐在、Expatriateから派生した業界後)扱いで東京に住んではたらいたのだが、住宅手当やらこみこみで年収はざっと3千万くらい。
そしてこの仕事が、シャレにならないくらいキツイ。
そこでは一つ気づいた法則があった。専門性の高いアドバイザリー系の職種では、そのファームの知名度の高さと、自分がムカつく上司の下で働かされる確率には、紛れもなく正の相関関係があるのだ。知的な職種ほど学歴やキャリアのスペックで採用をスクリーニングするし、そうすると「エベレスト級」のプライドの持ち主を選りすぐって雇っているも同然である。営業力で勝負する証券系ファームなどは、クライアントを人間力で惹きつけてこそ大きな案件を勝ち取れるのでまだ面白い上司がおおい。しかし会計・法律、そして一部特定分野のコンサル等専門性高いアドバイザリーファームでは、知見と分析力で案件がとれるところもあり、「エベレスト」の皆様がそのまま社会不適合なまま上まで昇進してしまう。
このような人たちは、得てして自分のことを「世界一賢くて、社会的にも成功してて、ちょっぴり有名人。そして、自分は絶対に間違いを犯さない。」と確信している。このような上司をもつと、たとえば、土曜の朝5時とかにそれまで全く関わってなかった案件のウルトラややこしい長文メールを転送してきて、文面に「Pls
take care of this asap by noon today. Call me when done. thx」といった感じである。そして少しでも遅れたりミスをしようものなら、「? I thought I explained this.」とメールを返してきて、重鎮パートナー(ひどいときには複数人)をccに加えてきたりする。「お前のミスの馬鹿加減を、社長に伝えたぞ。もうミスするなよこの馬鹿タレ。これに懲りたらさっさと作業に戻れ。」と言わんがばかリに。
この生活を奇跡的に4年続けた私はついにこう思った:「面倒くさい仕事は全部アウトソースできるプライベートエクイティの投資チームに転職して、楽して稼ごう。」 投資もファンド組成も全くの未経験だった私のPE転職の旅が、ここで始まったのである。(次号に続く。)