コンサル、外銀からスタートアップへのCXO入社や、起業をする人が増えている。
ニュースやSNSではその成功例ばかりが取りざたされるが、その裏で失敗した人々のポンコツ起業の瓦礫の山が築かれていることは、あまり語られない。私も様々な同僚が、様々な怪しげな会社を立ち上げては、無残に沈没していく様を数多く見てきた。
以下では、コンサル・外銀から威勢よく独立したものの、あっと言う間に撃沈してしまった人々の、共通の鉄則パターンを解説していこう。
1.フルタイムでコミットする社長がいない
まず多いのが、口ばかり動かす割に手を動かさない、中途半端に経歴がキラキラな創業者による、中途半端な腰の浮きまくった、地に足がついていない”中途半端起業”である。
この手の人の言い訳は”私はいろいろなことをしていて忙しいから”だ。しかしよく見ると何もやらずにどうでもいいことに手広く手足を付けているだけで、要するにコミットが無いのだ。
そんな恥ずかしい残念社長のフェースブックを見ると連日、旅行先や食べているご飯や、豪遊しているハッピー写真ばかり載せていて、どう見ても働いているように見えない。
このように社長がフルタイムでコミットしていない場合、投資家と社員の間で”私の仕事は金集め、あとは副社長、COOが実務をフルタイム”というような合意が出来ているわけでもない限り、大抵何事も上手くいかないものである。
2.必要な筋のいいチームをつくれる気配がない
次に多いのが、社長が頭いいんだけど生真面目過ぎて、なんでも自分で抱え込んで、なんでも自分でやろうとしてしまい、いつまでもワンマン創業で終わってしまうパターンだ。
仕事というのはどんどん分担していかないといつまでもスケールせず大きく成長させられないものである。
それなのに、これまでアナリストやファンドマネジャーなど一人で完結する仕事が多かったせいか、賢いのはわかるのだが、他人に上手く仕事を任せられずに沈没してしまうエリート創業者が結構多いのである。
もちろん人に任せるときは任せられる人を見る目や、自分がやるのと同じクオリティを可能にする適切なルール・マニュアル作りなども必要だ。
しかしなんといっても「一流の人材が集まる企業だ」という名声を築き、それがさらに良い人材を集める好循環を創り出せていないと、ウィニングチームにはならないものである。
私の友人の中で、既にビリオンダラーバリュエーションで極めて短期間で大きな成功を収めた友人曰く、「能力が高い人だけが切磋琢磨しあい、能力に応じて早期に昇進し、そうでない場合は退出する」というJリーグのようなカルチャーを創れているかどうかが重要と語っていたが、これに私も完全に同意する。
起業する上で社長の役割で最も大きいものの一つが、良いリクルーティングを出来るかどうかなのである。
3.投資家の筋が悪い
次に多い失敗パターンが、投資家の筋の悪さである。私の周りでも、某大企業の創業社長に、シードマネーたかだか数千万でいきなり30%も手放してしまい、その後の資本政策に大いに困って、大破綻してしまった女性がいる。
その後、株の買戻しで大もめにもめて、会社を閉鎖して一からやり直しの事態に追い込まれた人がいる。
これに対して筋のいい投資家は、起業家がやる気を失わないような条件で投資するし、自信が増せば、筋のいい投資家を連れて来てくれる。
このような信頼されている投資家から紹介された投資家は、既に「この人の紹介なら目をつぶって5000万」くらいの勢いで来ているので、あって1時間で投資決定という事態もザラで、凄い時はあって10分で投資決定というケースも存在する。
サポーティブな投資家か、起業家を食い尽くす投資家か、きちんと見極めることが重要なのである。
4.すぐに諦める気配に満ち溢れている
ここまで、起業する人が失敗する3大パターンを書いてきたが、他に一つ重要なものを挙げるとすれば、なんといっても「社長が最後までやりきる気迫があるかどうか」にかかっている。
大抵のスタートアップ投資家は「(形を変えてでも)最後までやり抜きそうか」「よいチームをつくれそうか」「市場が大きく、来ているセグメントかどうか(グローバル展開の余地があるか、自動化の余地があるか、など)」をよく判断してくる。
これに対しダメな会社の典型的な問題は、「社長が、すぐに投げ出しそうなオーラ」をぷんぷんさせているということである。
マッキンゼーやゴールドマンを出て、そろそろ起業などと考えている人は、間違っても「こんな仕事、私クラスの人間がする仕事じゃない」などと気位の高い選り好みをしていてはいけない。
また、「副業がブームなんだから、私もあれもこれもやりたい」などとフォーカスと迫力のないことを言わず、情熱一杯に何が何でもこれをやり抜くという気迫とオーラを振りまいて、「あなたと働きたい!」という優秀な社員・エンジニアを引き寄せられるかどうかが、成功の肝なのである。
以上、ポストコンサルキャリアの転職先としての、起業時の失敗ポイントを論じさせていただいた。