東京工業大学大学院 理工学研究科 KTさんの方より質問
外資系をファーストキャリアにするか内資経由で外資に行くべきかどちらの方が成長できるか悩んでおります。
外資系の説明会に行くと必ず教育プログラムが整っているということを強調されます。
しかし一年目から高額の年俸を頂くということは裏返せば当然、その年俸に見合う結果を求められていると思います。 ということは外資の成長とは結果がすぐに出る分野でのみ考えていると思います。
また、私は外資系戦略コンサルタントを第一志望としておりますが、会社説明会などに行くと離職率は20%~30%であるとの事でした。
対して野村総合研究所などは離職率が4.5%であることを考えると本当に成長できるのはどちらなのか?
是非実際に働いている方に、会社説明会ではないこのような機会に教えていただきたいと考えております。
講師による回答:大学じゃあるまいし、「教育プログラム」で職場を決めてはならない!
端的にご質問にまず答えます。外資といっても一括りに出来かねます。業界によって人材成長の取り組みや評価期間は変わってくるからです。
しかも外資でもトップティア、セカンドティア、サードティアではもはやほぼ違う業界というくらい待遇やプロジェクト、人材の質に差が出てくるので、外資VS内資という伝統的な比較は、伝統的に意味がないのです。外資系でもクビにしないところはクビにしませんし、日系でも干すところは干しにかかるからです。
またそもそも教育プログラムや自分を育ててくれるかどうかを、会社選択の基準にされているところからして、あまりアグレッシブなカルチャーのところは向いていない印象をうけました。
野村総研の事例がでました。確かに離職率は低いですが、そもそも転職志向が低い人たちが入ってきていて、かつ野村総研自体が長期雇用前提の会社なので、中に入ればそのカルチャーに染まるという側面があります。
また野村総研はコンサル業界随一のホワイト企業として知られますが、ホワイト企業につきものの、「たいして仕事していないのに給料をそれなりにもらっている人たち」がクビにならないという側面も忘れてはなりません。
これに対しMBBですと、そもそも上昇志向が強く、数年勤務を前提で入ってくる人が多いので、それがポジティブな離職率に影響しているのも事実です。
逆に言えば離職率が低くても、「単に楽だからこのまま居座ろう」という、ネガティブに低い離職率も存在するので、数字だけで一概に判断してはいけません。
本当に成長できるのはどちらかというご質問をいただきました。これはズバリ、ご自身が志向される成長の定義次第ではないでしょうか。
成長の方向性が、自分の幸福や価値観で重視するものと違う方向であれば、そんな「成長」は他人が望む成長で、自分のための成長ではないのです。
それでは以下に、ブランド、日系の方が幸せなタイプ、報酬に関して、各論の詳細を述べましょう。
外資系トップファームの有利な点とは?~優秀な人材の成長には長期的に潤沢な投資
一点目として、これらMBBが良い点としましては、やはりグローバルブランドとそこで培われる人脈です。
MBBにはトップティアの人材と、自分はトップファームで働くのだという自負と向上心の強い人が集まります。
そして実際に、コンサル卒業後で活躍が目立つのもこれらファーム、中でもマッキンゼー強しです。
また外資は結果重視で長期的な人材投資をしないという大いなる誤解がはびこっていますが、正確には「向いていな人材には退職を勧奨するが、向いている人材は早期にプロモーションさせ、様々なチャレンジを与え、潤沢なトレーニングを施してくれるのも、これらMBBの特徴でしょう。
そもそも、コンサルとしての成長は良質な案件を経験できるかどうかによるため、トレーニングでどうとなる問題ではないことは、コンサルをすればすぐわかることです。
ただMBBが優秀なアソシエイトに学費を出してトップMBAに送ってくれるのは、レジュメのブランド力や人脈強化の意味で、非常に大きなプラスと言えるでしょう。
日系企業に行ったほうが確実に幸せな人も存在する~絶対クビにならない安全地帯?
二点目に考えるべきは、「日系」が何を指しているのかと、その最大のメリットが自分にとって重要かどうかです。
つまりズバリ、「三菱商事はクビにしない」というメリットと、40を超えても2000万そこそこで安定飛行という状況が、自分の幸福関数にとって非常にありがたいタイプの人は、日系を選べばよいのです。
おまけにこれら日本を代表する大企業は、政府の意向に敏感なので、2020年初頭のコロナショック時の在宅勤務奨励の流れを受けて、非常事態宣言が終了しても引き続き在宅勤務を続けるところが多くうまれました。仕事は正直、ますます楽になっていると三菱商事で働く友人は、暇そうにFBを連日更新しながら呟きます。
官僚的で年功序列で社内調整作業がほとんどというデメリットより、今どき終身雇用で2000万強が50代後半まで続く見込みにメリットを感じれば、日系のほうが向いている人だって確実に、数多く存在するのです。
もちろん伝統的大企業が変化の波に乗り遅れて倒産し、中にいた役立たずのオジサンはスキルも陳腐化されていていくところがない、というリスクも存在します。
入社当初は優秀だったはずのタレントを、会社の社内調整の達人に仕立て上げ、プロフェッショナルスキルが一切ないオジサンになるリスクは、上記安定リターンの代わりに甘受しなければなりません。
それでも日の丸日本のメイン企業で、バランスシートに数千億、数兆円の余裕がある企業は、なにもしないオジサンを今後も大量に抱え、2割のスター選手が全員を養ってくれることでしょう。
(こんなフリーライド安定志向を、20代での就職志望動機にしないでほしいところではありますが)
初任給などの年某の差は、長期的に見れば知れている
最後に、給与の比較について論じます。結論はズバリ、若い最初の数年は外資に軍配があがりますが、その数百万x数年の差は長いキャリアで見れば大したことありません。
30前半では労働量を勘案すると、外資でシニアマネジャーに出世していなければ日系と同等になり、長期的に働けるかという意味では、「あまり活躍していない30代後半~40代」では日系に軍配が上がります。
しかし一部スター選手ならば、MBBで数億稼ぐパートナーにあがるケースも少数存在、というのが実態です。
外資に比べて給与が低いと文句を言う人は、これは的外れなのです。
金融商品と同じで、リスクアドジャステッドリターン(リスク調整済み収益)を考えれば、解雇されるダウンサイドリスクが低いのだから、給与的なアップサイドもその分低くて当たり前なのです。
こう考えると、コンサルに向いていなくてたいして活躍も昇進もできないだろうが、コンサルという仕事が好きなので長らく続けたい、という人は野村や三菱総研のほうがフィットは高いです。(別にこんな書き方しているからと言って、野村総研の社員がコンサルとして優秀ではないといっているわけではありません。)
逆に世界最高水準の人材とクライアントから全社レベルの上流の戦略案件をグローバルオフィスの同僚と経験したい、向いてないときはアウトされても文句ないです、という方は、マッキンゼーやベインのほうが向いているといえるでしょう。