雑用の山の中で、本質的スキルを学んでいける人でないと、投資銀行では雑用で使い倒されて数年で解雇されてしまう
4時間しか寝てないのにいつもの忌々しい目覚ましの音で起こされたあなたは、8時半から始まるM&Aチームミーティングのために大手町のオフィスを目指す。
一階のドトールでアイスコーヒーをかっこみ、昨夜2時に作り終えたMD向けの資料を印刷する。 “しまった、パナソニックによる買収金額だけ、USD表記されている!! 他の会社は円で表記されているのに・・・”
“まずい!会社のロゴマークの色の出が悪い・・・違うHPからとってきて印刷しなおさなくては・・・”
“おいおい、プレゼンテーションチームの連中め!! あれだけこのグラフは大きく、色は黄色で、と指定したのに、指示が反映されてないじゃないか!!”
これから指摘されるだろう山のような“一見どうでもよさそうなミス”に心を沈めながら、あなたは山のような赤線修正を渡されミーティングを後にする。
11時からはニューヨーク上場を控える○×銀行のドラフティングミーティング。(株式販売の際の、目論見書作成ミーティング)
前日に株価が急落して予定のオファリングが突然延期され、あなたは新たに発表された決算内容のコンフォートレターを会計士に依頼しなければならない。(注:コンフォートレター:企業から出された会計情報が正しく合理的な会計基準に基づいていることを外部の会計士が確認したという証明書)
“はー、また同じ作業がタダ働きで発生するのか・・・あそこでコロナショックさえ起きてなければ、今頃はロンドンで投資家を回っていたのに・・・”
リンクレーターと長松大野の太っちょな弁護士に囲まれ、あなたは詳細な事業リスク内容を事業部長に問いたださなければならない。
“この石油事業が上手くいかなくなる最大のリスク要因とは、どのようなものですか・・・”
“マレーシアのパルプ工場に対する巨額投資の債権は今期中に特損処理するつもりですか・・・” 自分で起きているのが不思議なくらい、退屈な質問が果てしなく続くのであった。 (次回ヘ-)
-―少し砕けたトーンで記載したが、投資銀行への就職を検討する際は、このような典型的なシーンをより多く知っていただきたい。
当サイトでの情報提供が、あなたが本当にやりたい仕事かどうか、自分の強みが生かされる仕事かどうかを把握する一助になれれば、と思っている。
なお、上の例では苦しいワンシーンを記したが、投資銀行業界のプラスの側面、勉強になる側面も、より具体的に伝えたいと思っている。
私は今回、“特定のインベストメントバンクを売り込む”という立場から離れているので、より中立的に、業界の実態/各社の特徴について真相を率直に伝えようと思う。
テック企業やテックスタートアップに人材が流出したとはいえ、いまだに世界中の優秀な若者が志す業界だけに、労働のミスマッチを解消する一助になれれば幸いである。