私は現在公認会計士として働いています。外資セミナーにはコンサルや投資銀行の前に会計士を目指すべきか、という相談をよせられる方がいらっしゃいますので、 会計士としてのキャリアの実態をお話したいと思います。
まず私が会計士をめざしたのは、金融業界で最強の資格でキャリアの選択肢が広がると思ったからです。前職は金融とは関係のない業界にいたので、絶対に一発合格してキャリア・チェンジしたいという想いから職を辞して、猛勉強をはじめました。
会計士試験の特性として、難易度が高いのはもちろん、とにかく試験範囲が広いということがあります。財務会計・管理会計・財務諸表論・税務・監査論・会社法・経営(選択科目)と、計算科目のみならず理論科目も相当勉強しなければなりません。テキストを横一列に並べると、うんざりなぐらいです。これだけの範囲をまんべんなくマスターするには、当然ながらそれ相応の時間確保が必要になってきます。
会計士試験受験者は、専門学校を利用するのが一般的です。講義は毎日あるので、まずカリキュラムに遅れずついて行くのが大変でした。授業はどんどん進んでいくので、その日の内容はその日のうちにマスターしないと、たちまち落ちこぼれてしまうのです。
現にクラスの人数は時の経過と共にどんどん減っていきました。試験直前期には、それこそ食べて寝る以外の時間は全て勉強に費やしました。朝の7時から夜の23時まで、テキストや問題集、答練を何度も何度も繰り返しては頭の中を整理するという生活をおくっていました。
中には大学1年の時から受験勉強をしているひと、40近くで始めるひと、2度3度と受け続けている人も多かったですが、私は幸いにして、勉強開始後1年半、1度目の受験で合格できました。短期勉強・一発合格の秘訣としては、、秘訣と言うほどのものでもないのですが、自己規律、そして最後の一秒まで諦めない強い気持ちだと思います。
さて、私はその後大手監査法人に入りました。複数の監査法人を受けたのですが、面接の質問で聞かれることは、あなたの強みは何か、5年後10年後にどんな会計士になっていたいか、などなどでした。今の事務所を選んだ理由は、リクルートで出会った若手スタッフの方たちが一番しっかりとしていて好印象を持ったからです。
なお会計士は供給過剰で就職が厳しくなったと世間ではいいますが、それは本当です。例えば新たに入れる新入スタッフ数はここ数年で5割減りましたし、合格者が2年間通う実務補習所でも就職先が決まっていないという方が多くいると聞きました。また、わたしの事務所でも会計士を対象にリストラが実施されました。退職した会計士のキャリアは様々で、証券会社、コンサルをはじめ、会計事務所、独立開業などがあげられます。
会計士になるのに結構な時間とお金を投資することになりますが、私が会計士になってよかったと思うのは、第一に非常に責任の重い仕事である一方で経済社会に貢献しているという実感が持てること、第二に会計は全ての経済活動に通じているので、日々のニュースが仕事に直結していて変化と刺激にあふれていること、そして第三に、お手本にしたくなるような優秀で魅力的な先輩上司がたくさんいるといった点です。
逆にイメージと違ったポイントは資格を取ったからといって、仕事が転がってくるわけではないという点です。日本のIPO市場は2020年までのブルマーケットで一時的に活況をみせていますが、長期的にはIPO件数は低迷し、上場企業は減少傾向を辿っています。
会計士の仕事を会計監査だけに限定した場合、お客さんは減る一方でどの監査法人も生き残りをかけて必死です。このような環境要因もあって同僚の会計士でもせっかく苦労してなったのに転職する人が結構いますが、その理由はたいてい“監査に飽きた”といったものです。
逆に会計士に向いていて、いつまでもやめず、末永く活躍している上司の特徴は、会計そのものが大好きで、クライアントをより良い会社にしたいという情熱を持っていることです。探究心旺盛でアドバイザリーに興味がある人は会計士が向いていると思います。この業界では、職位が上がれば上がる程クライアントに最善のアドバイスを提示することが求められるのです。
私自身、Strong Careerでキャリア相談を受けたのがきっかけでその後、会員として参画させていただいていますが、Strong Careerではコンサルや投資銀行に入ったあとでの士業への転身、また会計士を経てからのキャリア開発といった観点から皆さんからのキャリア相談にお応えさせて頂ければと思います。