グロービス・キャピタルへの転職(上):日本のVC業界の本格成長はこれから

グロービス・キャピタルへの転職(上):日本のVC業界の本格成長はこれから

日本を代表するベンチャーキャピタルのトップファームとして、国内最大級のファンドを運用するグロービス・キャピタル・パートナーズ(“GCP”)。当社は業務拡大に伴い、随時積極的に採用活動を行っている。スタートアップへの関心が強く、日本発ベンチャーのバリューアップを経営戦略・事業戦略・組織戦略のフルスペクトラムで行い、海外進出支援をされたい転職志望者の方は、是非応募をご検討いただきたい。以下では、代表パートナーの高宮慎一氏に、日本のVC市場、GCPの戦略と展望、そして採用方針について伺った。

グロービス・キャピタルへの転職:日本のVC業界の本格成長はこれから

日本のベンチャーキャピタル産業もグロービス・キャピタルも、成長は始まったばかり 

Q:高宮さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。日本のベンチャーキャピタルとしては、御社が圧倒的ナンバーワンの地位を築かれております。

 御社のブランド力や、プラットフォームの強みを生かしたディールソーシング(投資先・投資機会の開拓・検討・交渉)に加えて、投資先企業のグロース支援に特化した新組織の創設など、これから御社を志す方々にとってはまたとない良い環境・ステージにありますね。

A:日本のVC業界において、幸い弊社は、まだ日本に新興市場が無かったような業界の黎明期からやっていますので、悪くないポジションにはいると思います。ただ、市場の成長余地を考えると、まだまだ100周のレースのまだ序盤の段階で、「先頭集団にいる」と言っても仕方がないと思っています。

ここからさらに、日本のスタートアップ業界、VC業界は大きくなっていくと思いますし、大きくするんだという気概をもって臨むような業界だと思っています。日本のVC市場規模は、米国の数%程度と非常に低水準にとどまっており、まだまだ成長余地が大きいです。

僕がこの業界に参入した13年前は、1億円の投資でも大きなロットであるとメディアに取り上げられていたのが、足元では10億円では大きいとは言えず、50億円規模でやっと大きいと言われるようになりました。

ようやく資金供給側がボトルネックではなくなってきており、僕たちVCは、起業家にのびのびバットを大振りしてもらえる環境を提供できるようになりました。

市場として成長期に入ったばかりなので、これからも将来有望なスタートアップがどんどん出てくる面白いフェーズにあると思います。日本のVC市場は今まさに拡大期にあると言えるのではないでしょうか。

どのような問題を解決すると、大きな価値が産まれるのか?~ベンチャーキャピタル投資と他の投資家の違いとは?

ベンチャーキャピタリストは、「投資家」というとエスタブリッシュメント的なイメージを持たれがちではありますが、出来上がったレールを走るサラリーマンというよりは、起業家的な要素が強く求められる仕事です。また、情報が開示されている中で、銘柄をピックして自由に売り買いする上場株の投資家のような感覚とも違います。

市場のトレンドを見て受け身で判断するのではなく、業界の大きな流れや負に対して、「ここを解決すると大きな価値が生まれるのではないか、負が解消されるのではないか」という仮説を立て、投資という手段を通じて起業家の背中を押すことで、世の中をより良い方向に変えていくという覚悟=自らの意志が必要であると考えています。

言い換えれば、私たちは、VC投資を通じて、日本の産業創出や国際競争力強化のために何ができるかを主体的に考え続けています。

ベンチャーキャピタル市場動向:バイアウト・ベンチャーキャピタル・シードキャピタルの違いと、薄れる境界線

Q:御社は、過去23年の歩みの中で数々の変革を遂げられましたが、業界の潮流としても、バイアウトファンド等と業務領域の垣根が崩れて来ている感がありますね。

そのような環境変化を踏まえて、どのようなイニシアチブをとっていくのか、10年後のグロービスの姿をどうしていきたいと考えているのかについてお聞かせください。

A:おっしゃるとおり、投資ステージごとのインベストメントチェーンの垣根が非常に曖昧になってきていると感じます。

業界を問わず、黎明期は各プレイヤーの役割がはっきり分かれていたのが、成長期になると、その端境(はざかい)と辺境にあるチャンス(投資機会)”を狙うべく、各プレーヤーが垣根を崩していくものだと思います。

投資ステージの早い方では、シードといわゆるクラシックVCの垣根が崩れつつあります。この2つは、同じスタートアップ向けの投資ファンドであっても、本来、その投資のしかたは似て非なるものです。

わかりやすく極端な表現をすると、起業家はいるがチームは集まっておらず、書面上の事業計画はあるがプロダクトができていないという状態の100の投資先に、それぞれ数百万円から数千万円を張って分散すると言うのが、従来のシードのやり方でした。

一方、VCにおいては、20から30の投資先に数億円ずつ張るとともに、VCの社員が社外役員として投資先の中に入って、コンサルのような形でバリューアップをするイメージです。自分たちも企業価値向上のパラメーターの一つとなり、事業の規模化、仕組化、組織化を後押ししていきます。

しかし、足元では、シード期と、シリーズ以降のアーリーのフェーズ(起業の初期段階に続く次の成長段階で、「シリーズA」と呼ばれる追加の成長資金を得る必要がある)の境界が曖昧になってきています。

いうなれば、PMF(プロダクトマーケットフィット)は、どこまでできていればPMFと言えるのかという線引きがしにくくなっているということです。

マーケットの需要が確認でき、そのマーケットのプロダクトが刺さることが確認できたところで、数億円単位の大規模な投資を行うというのがVC投資のセオリーでした。しかしフィットしきる前に見切り発車で早めにVCが資金を投入するケースもあれば、十分な投資資金を蓄えたシードファンドが数億円を投じるケースも出てきています。

ベンチャーキャピタル投資で、クロスオーバー投資家が増えている理由とは?

メルカリは上場前に176億円もの調達に成功し、新たな道を切り開きました。これは、バイアウトファンド、ミューチュアルファンド、ヘッジファンドなどの投資金額が大きいプレーヤーに対して、十分な投資ロットをアロケートするだけの資金需要が出て来たということを意味します。

上場株の投資家が、本来のスイートスポットの上場後よりも早い段階の未上場のフェーズに降りてくる背景の一つには、上場株のマーケットでリターンがそれほど上がらなくなってきたということもあります。

その相乗効果として、資金供給側のキャパシティが広がってきたことで、資金需要側のスタートアップにとっても、未上場の間に、上場までの期間、累積調達額および企業規模の拡大をすることが可能になり、それが大きなトレンドとなっています。

未上場の期間が後ろに長く伸びたことで、ファンド規模が大きいバイアウトや上場株のプレーヤーが参入する余地が出てきたという点では、上場間近のレイターステージでも垣根が曖昧になってきていると感じます。

さらにいうと、上場企業・未上場企業どちらにも投資する「クロスオーバー投資家」による資金供給も増えています。先ほどの「端境に投資機会がある」という意味では、足元で未上場と上場の間のリスクリターンが相対的に魅力的になっているので、上場株の投資家がVCに降りてくるとか、未上場市場のプレーヤーがより長く保有するなど、ちょうど上場前後あたりの投資家が増えてきています。

グロービス・キャピタルがGCPXを新設した背景~ベンチャーキャピタルには「バリューアップ」能力がより重要に

このように、資金供給側でプレーヤーが増え、資金流入も活発化している中では、資金以外にどんな価値を提供できるかという点がVCに問われてくると考えています。

GCPの場合は、個々のキャピタリストが、VCとしては最も早い段階から投資を開始し、これまで積み上げてきたスタートアップの経営戦略、事業戦略、組織戦略の知見を生かして、しっかり経営者に寄り添って支援していきます。

これに加え、新設されたバリューアップ特化チーム「GCP Xが組織戦略から、採用や組織構造のプロセス設計まだ落とし込むことを支援しています。ここでポイントは、キャピタリストとGCP Xが連携することで、単なるスポットでの労働力を提供しているのではなく、経営・事業戦略と組織戦略をしっかり整合させ、組織戦略の実行まで支援しているところです。

まずはスタートアップの経営陣、GCPのキャピタリスト、Xのメンバーで経営戦略、事業戦略、組織戦略のトライアングルをしっかり固め、投資先の幹部社員と共有し、現場の実務に落とし込むところまで一気通貫で実施するイメージです。

いわばスタートアップ向けに無料で戦略コンサルをしているみたいなものです。

グロービス・キャピタル・パートナーズによる投資先企業のバリューアップ:経営戦略・事業戦略・組織戦略の総合支援~4Rの中では、特にCxO採用が極めて重要

Q:御社が掲げられている、HRHuman Resources)、PRPublic Relations)、IRInvestor Relations)、そしてエンジニア(EngineeR)の「4R」の中で、最も重要なのはどの要素でしょうか。

A:CxOクラスの採用サポートが最重要でしょうね。 組織づくりのセオリーとしては、上のポジションから採用していき、上に立つ方に組織を作ってもらうというのが鉄則です。

企業価値に対するインパクトとしてCxOクラスの経営人材を採用することが最も大きく、かつ一番難易度が高いのですが、僕らのネットワークを活用して一本釣りや、採用の際のバイインの支援もしています。

また、その下で働くミドルマネージャーや現場メンバーの採用についても、採用のプロセス設計や、そのプロセスを回す責任者の採用も支援していて、仕組化、組織化を進めています。

Q:ベンチャーキャピタル業界でも、資金供給のコンペティションというよりも、どんなバリューアップができるかという点が問われているのですね。

高宮さんが数多くの案件を手がけられた中で、前述のCxOクラスの人材の採用以外で、バリューアップに最も重要であると感じていることをあげていただけますでしょうか。

A:経営者目線での戦略レベルでのバリューアップがコア中のコアであり続けるというのは変わらないと思います。さらなるバリューアップのフロンティアの拡大、戦略との掛け算での相乗効果という意味でのオペレーションの支援です。

やはり、経営レイヤーの三角形(経営戦略・事業戦略・組織戦略)があってこそのオペレーションの支援だと思います。

経営陣の戦略が定まっていなかったり、戦略が腹落ちしていなかったりする中で、単なる御用聞きで手足の作業を手伝うとしたら、それは単なる事務代行屋であり、高いバリューアップ効果をあげているとは言えないと思います。

上流工程である戦略構築をしっかりと行う、具体的にいうと、起業家の壁打ち相手になりながら、お互いに腹落ちし、勝てる戦略を一緒に作り上げることがスタートポイントして重要です。

戦略への深い理解があるからこそ、実務への落とし込みまで一気通貫でできるのです。なので、ここはグロービス・キャピタルにとってコアであり続けると思います。

グロービス・キャピタルが目指す、3つの発展段階とは?

Q:御社が手掛けられた大成功案件である、メルカリの事例をお手本として日本のスタートアップの海外進出が進んだ場合、御社が果たすべき役割についてどのような目線をお持ちでしょうか。

A:私たちが目指す姿を3つの発展段階に分けると、ベーシックレベルとしては、日本のナンバーワンのVCが米国のナンバーワンのVCにバトンタッチすることです。これは実現できています。

次のレベルとしては、投資先の海外進出を僕らが支援することです。 

さらなる飛躍のステージにおいては、日本ナンバーワンVC として、日本と関係のある海外の案件はもちろん、日本と関係ない案件でも僕らがやりますと言えるようになるのが理想です。

Q:そのようなケイパビリティを御社が組織的に作っていきたいと。
A:
はい。時間軸は色々議論がありますが、長期的には実現したいと考えています。 

日本発世界を獲る3つのモデル:ユニバーサル、マルチナショナル、グローバルニッチ

Q:海外進出支援に関してですが、意地悪な聞き方をしますと、結果的に日本はインターネットとAIデジタル革命、両方で乗り遅れ、海外進出出来ているスタートアップはほぼ聞きません。

日本は80年代に製造業で世界をリードしましたが、インターネット、さらにデジタルと2ジェネレーション連続で、後陣に拝してしまったのはなぜでしょうか。海外勢からは、IT分野でグローバルシェアを取れる日本企業は出でこないのではないかと見られています。

A:日本のスタートアップにとって、かつて足枷の一つだった供給側の資金量は世界で戦えるレベルになってきました。日本企業にとって今なおハードルとなっているのは、ホームマーケットのアドバンテージ(地の利)がないことです。

例えば、アメリカは国内マーケットはそもそも規模が大きい上、ラテン系、中国系、インド系、欧州系など様々な人種が共生する社会であり、国内マーケットが世界につながているという地の利があります。 全人類最小公倍数のニーズを横ぐしでワンプロダクトで獲っていくようなユニバーサルサービスを展開する上で、は、地の利がプラスに働きます。

しかし、ベンチャーキャピタリストたるもの、難易度が高いからやらない、不利だからやらないというのはガッツがありませんよね(笑)実現性のハードルを、戦略と気合いで乗り切るべきだと考えています。 

そして次は、メルカリやスマートニュースなどもそうなのですが、マルチナショナルのモデルです。メルカリのようなコマースは、ローカルユーザーのビヘイビアーや決済・宅配便のインフラに左右されるため、国ごとに市場環境がことなり、世界を横串で通して獲っていくというよりり、国ごとの陣取り合戦になっていきます。 

この場合、日本のようにユーザ数という意味ではそこそこだけど、一人当たりの単価が高い収益性の高いマーケットでいち早くドミナントになり、その国をキャッシュカウ化したあと、メジャーリーグに殴り込みに行くという戦略もとりえます。これがメルカリのとった戦略です。

このカテゴリーは、ユニバーサルサービスよりは戦いやすいけれども、ディバイド・アンド・コンカー型(「分割統治」または「分断統治」)のため、資金量はかなり必要となります。ウーバーもこのモデルで、様々なライドシェアやフードデリバリーの競合と各国で大きく資金を投下して、多方面で戦局を展開しており、資金調達の成否が事業に直結すると言えます。

また、日本特有の強みがあるニッチな領域で世界を制覇するという選択肢もあります。例えば、漫画・アニメの二次創作のプラットフォーム”pixiv”はグローバルで二次創作サービスとしては席巻しました。

個別の国のマーケットはニッチであるものの、グローバルで横串を通して括った瞬間にニッチではなくなるという例です。日本特有の強みが活きるという意味では一番難易度が低いです。

また、世界で戦うためには、DAY1からグローバルマーケットを見据えるかどうかという視点が重要です。先ほど触れたPMFとも関連しますが、最初から国内マーケットだけを対象としてプロダクトの最適化を図ることは、その他のマーケットにフィットしなくなることもありえます。

メルカリは、アメリカ事業で一定の成功を収めて上場しましたが、いわば初めてメジャーリーグに行って成功した日本のスタートアップのロールモデルとして非常に大きい存在です。

ロールモデルが出てきたことで、心理的なハードルがかなり下がりましたので、日本企業の世界進出は今後期待できると思います。

なぜ海外大手VCの日本進出は進まないのか?:ベンチャーキャピタル投資は、ローカル性が強い

Q:先ほどおっしゃられた「地の利」にも絡むかと思いますが、バイアウトや上場株の投資家については、外資系企業の日本支店があるのに、 世界の名だたるブランドのVCが日本法人を作ってもなかなかうまくいっていないようです。日本のマーケットならではのローカル性がエントリーバリアになっているのでしょうか?

A :VCの事業特性としては、アーリーであればあるほど、その市場のエコシステムのど真ん中にいて、市場を理解してしっかりとスタートアップの事業成長を支援するという点においては、日本に限らず、ローカル性が大きい事業だと思っています。先ほどのカテゴリー分けでいうとVCは、マルチナショナル型ということです。 

後編に続く

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