BCG(ボストンコンサルティンググループ)退職理由でバレる業界の実態とは?
新卒でストロングキャリアを経由してBCGに入り、東京、ソウル、上海、パリ、そして現在働いている某欧州オフィス、と各国のプロジェクト及び勤務地トランスファーを経て様々なコンサルティングケースを担当したAさん。
彼は某ハイテクメーカーのコストカットや小売の中国進出ケース、某自動車メーカーの○×進出プロジェクトなどを経験した後、大手プライベートエクイティファンドに転職が決まりました。
なおプライベートエクイティファンドへの転職時も弊社を利用され、当セミナーを通じて二度、転職されたことになります。
あれほど苦労して入った超人気難関トップファーム、BCGを辞めたがるのは果たしてどのような理由なのでしょうか。これはBCG固有の問題というより戦略コンサルという仕事特有の問題です。
コンサルからの転職理由①:コンサルという名の高級派遣業@BCG
まずトップファームといえども、企業の命運を左右するような全社プロジェクトを社長と共に行っている……というケースはあまりありません。
大半は事業部長クラスからの発注であり、コンサルティングというより調査モノ、インタビューしたことをまとめただけというような、”あまり経営を変革しているとは思えない”プロジェクトが多いことに気づき転職を志すケースが多いものです。やはりサービス業である以上、発注者の意向に沿った提案書にならざるを得ないのです。
また、コンサル業界も業態が変化し、多くのファームで「高級派遣業」化しており、多様な業種や企業のプロジェクトに参画するというより、一つの会社に長年張り付くケースも多くなり、当初のイメージとかけ離れてきた、という理由を上げる人も少なくありません。
なお、だからこそクライアント企業の中に入り込んで、当初はコンサルに反発を抱いている現場の方々を巻き込み、モティベーションを高めて最後は自分を応援してもらう、といった人間関係をつくれる人は、コンサル転職後にさらにプライベートエクイティに転職し、組織のバリューアップなどでも貢献することが多いです。
常駐型のプロジェクトは苦労もひとしおですが、コンサルファーム在籍中に積極的に経験されることをお勧めいたします。(かといって当然、現場に張り付いてRPA導入するだけのプロジェクトを言っているのではありません。)
コンサルからの転職理由②:過酷な勤務時間~ボスコンはやはり忙しい!
次に、東京オフィスでの過酷な勤務時間があげられます。毎日22時やそれ以降まで働くのが平気な人もいますが、やはり30を超えてくると辛いもの。所帯を持つようになると、家庭崩壊で人生崩壊という、本末転倒なことになりかねません。
これはニューヨークやロンドンオフィスにトランスファーすると分かるのですが、欧米の同僚は結構なライフワークバランスを享受しており、7時や8時には大半のコンサルタントが帰宅しているのです。
趣味のワインクラスや お料理学校、タンゴレッスンを楽しむ同僚も多いですし、フランスや北欧の同僚などはうわさ通り、一ヶ月以上のとんでもなく長い夏休みをとっていたりします。
これに対し外資とはいえ所詮日本カルチャーに根ざした東京オフィス、とにかく仕事があろうが無かろうが、上司が24時まで帰らなければ一緒にオフィスにへばりついているし、土曜だろうが日曜だろうが平気で出社を求められることも多く、30歳にもなると気力がついていかなくなります。
最近は各社の優秀な若手コンサルタントを囲い込むために、プロジェクトの間なのにどう見てもバカンスのような出張に行かせて休ませるケースもありますが、それでもロンドンオフィスで7時とか8時に皆帰宅しているのに、日本オフィスだけまだまだハードコアで、ワークライフバランスが相当厳しいのです。
ただし、コンサル各社が人材不足に悩む中で(コロナショックで買い手市場に戻りつつありますが)、多少労働環境は改善していることを付け加えておきます。
コンサルからの転職理由③ 第三者としての立ち位置の限界~BCGのコンサルとしてでなく、事業会社の内部で実際に実務をこなしたい
コンサルは、クライアント企業が決断を下しやすいように論点整理してアドバイスするわけですが、やはり企画段階から実行、修正、再度実行といったPDCAサイクルを自分で回したいという欲求を多くの人が持つようになります。
これは、コンサルは基本的な動き方は数年したら学べるから(逆にそうでない人は、アップオアアウトのアウトです)と、結果的に実行側に回ったほうが”次の成長カーブ”が高いからです。
多くの場合、オーナーとして長期間バリューアップに携わるプライベートエクイティを目指される人が多いですが、事業会社の良好なポジションや、最近では資金調達に成功した有力スタートアップに転職されるケースも増えています。
アドバイザーとしての立ち位置では、自分のビジネスパーソンとしてのオールラウンドな成長に危機感を感じ、コンサルとしての学びが鈍化したころに、このパターンでのコンサルからの転職が増えます。
コンサルからの転職理由④BCGの上司と合わなかった~有力パートナーに嫌われたら、早急に見切りを?
BCGに限らず、コンサルファームでの昇進はパートナーの押しが重要なので、仮に社内の古株で有力なパートナーとそりが合わなければ、コンサル卒業しなくとも、他ファームに転職するケースがあります。
嫌いなパートナーと長期間同じプロジェクトに入れられるのは、精神的・体力的につらいですよね。毎日厳しく詰められたうえ、努力しても評定で、結局は”こいつは気に食わない”という感情に沿った”失敗の証拠”が山のように集められ、アサインされるケースもどんどんつまらないものに。
しまいにはビーチに追いやられ、BCGからアウトされる展開が目に見えている場合は、レジュメに傷がつく前に先手必勝のプロアクティブな転職活動が重要です。往々にして、社内で見返そうという努力は、有力パートナーの一存で握りつぶされることも少なくないのです。
コンサルからの転職理由⑤中間管理職の悲哀~客の要求はアップ、部下の質はダウン?
コンサルとしてケースの解決に尽力する作業はそれなりに楽しく、学びも多く、給料も悪くなかったものの、マネジャーになったころから若手の育成など管理業務が増え、本来やりたくない仕事が増えるのは、コンサルに限った話ではありません。
しかしBCGのように短期間で急拡大すると、採用時のハードルは下げざるを得ず、結果的にコンサルとしての動きをBCGスタンダードで身に着けていない中途採用組のトレーニングに時間がかかるように。その割にお客サイドは、元MBBの「コンサル使い慣れ」している人が多くなっているので、コンサルプロジェクトのどの予算が不要で、どのスコープが不要で、どこまで踏み込んで作業をするのか、事細かく口出ししてくるように。
最初のプロジェクトだけ安めで入って、大量の問題点を”発見”して幾つもの不要なコンサルプロジェクトを、長期間にわたって売り続けられる時代は終わりました。
質の下がった同僚と、要求水準の上がったクライアントの挟み撃ちにあいながら、高額のフィーを得続けるプレッシャーは(実務をやらないパートナーでなく)デリバリーに責任を持つ中間管理職に降りかかってくるのです。(おまけに商事から売り子採用した上が売ってしまった、不可能な炎上ケースの火消しも押し付けられながら)
コンサルからの転職理由⑥:BCGからアウト~アップオアアウトは減少気味でも”健在”
コンサル退職理由で常にあるのが、アップオアアウトのアウトです。マッキンゼーやBCGは比較的この運用に厳しく、コンサルタントとしてのこれ以上の成長が見込めないとなると、退職に追い込まれることになります。
ただしこれは、よっぽどウマの合わない上司に政治的に追いやられたのではなく、単に本当にコンサルに向いていないのであれば、早めに解雇されたほうが、ご本人の為です。若ければ若いほど、転職の幅は広く、機会も大きいからです。
これが、つぶしの効かない30後半や、未経験転職がほぼ不可能に近い40代でのアウトになると、次の行き場が見つからず路頭に迷う”高学歴ニート”に転落しかねないのです。
コンサルからの転職理由⑦:コンサルは辞め時が重要
なお、コンサルは辞め時の判断が非常に重要です。まず専門性や経営力に対する不安を抱く人も多いものですが、これは3ヶ月や6ヶ月単位でプロジェクトが変わるため、産業を幅広く見れる反面、深く一つの業種や経営ファンクションのエキスパートになるには経験的な浅さが否めない点があります。
加えて所詮、長大な資料のプレゼンに終始し(最近はエクセキューションのお手伝いプロジェクトも増えていますが)、取締り役会で発言権があるわけでも決定権があるわけでもないので、実際”経営にインパクトを与えてる感の欠如”から、経営権を握れるプライベートエクイティや事業会社のマネジメントに転進する人も多いものです。
なお、コンサルを3年ほど経験して年齢が30前ですと、コンサル後の転職の幅は大きく広がっています。これに対し、コンサルに長居しすぎて、40とかになってコンサルから転職しても、せっかくのコンサル転職組であるにもかかわらず、転職の幅はぐっと縮まってしまっていることを覚悟しましょう。
トップティアのコンサルティングファームは入るのも難しいですが、コンサルのスキル自体は数年で上昇が飽和していきます。
よってコンサルは、自主的に辞めるタイミングの見極めも非常に重要なのだと思います。(コンサル転職後の人気職・プライベートエクイティも、30中盤で未経験だと俄然、転職が難しくなります。)