COMPS(コンプス)の罠~どんな時にコンプスで投資を失敗するのか?

COMPS(コンプス)の罠~どんな時にコンプスで投資を失敗するのか?

企業価値評価で最もポピュラーな手法の一つ、Comps(Comparable Company Analysis). 投資銀行や資産運用の実務で目撃した、その問題点と落とし穴とは?外資系投資銀行、資産運用会社のトップファームで活躍する講師陣が直接解説します。

Comps(コンプス)バリュエーションの落とし穴とは?

投資銀行や資産運用会社で投資先をバリュエーションするとき、最も使われる指標の一つがコンプスです。Comps, Comparable Company Analysisなどと横文字や英語で書くといかにも専門性が必要そうですが、何のことはない、投資対象企業のバリュエーションを、比較対象企業と比べて、割高や割安、打倒価格を判断するものです。


比較に使われるバリュエーション指標のポピュラーなものは、PER, PBR, EV-EBITDA, Free Cashflow倍率などですが、このコンプス、投資銀行に売り込まれる時、実は大いに操作可能な手法でもあります。そこで、Comps(コンプス)使用時の注意点を以下に解説します。


1・コンプスに、外れ値の会社が入っている

コンプスあるある、ですが、例えばPER15,17,20,14、と来たところに、一社だけ50みたいなのが入っていて、これら5社を平均して”ターゲットPERは26です、、、”みたいに膨張させるケースです。

この50という外れ値は、往々にして特別損失がかさんで当期利益が極端に圧縮された企業が入っていたり、予想外の上方修正が続いて翌年やその次の年の予測収益に基づいて取引がされていたりと、全く比較対象でない企業が入っていることが多いのです。

コンプスで証券会社や投資銀行が割安などと売り込んできたら、そのコンプスの中に入っている企業の外れ値を精査してみましょう。

2・コンプス対象が、比較可能な会社でなかったりする

上記でも”比較対象企業でないケース”を書きましたが、他にもよく見るとそもそもビジネスモデルが違ったり、企業のサイズが全く違ったり(時には売上が100分の1とかの企業がしれっと入っていたりする)、収益ではなくバランスシートの含み益ベースで取引されている銘柄と比較されていたりします。

そもそも比較可能な企業でない企業群をベースにコンプスバリュエーションがつくられていることも多々あります。

企業側が素人であることをいいことに、もっともらしくしれっと的外れな企業がコンプスに紛れ込んでいることも多いので、是非注意してください。(なお、時価総額が全く違う企業をコンプスに入れるときは、Weighted Average Compsとか言って、時価総額の大きさで加重平均するのがより正しいアプローチです。)

3.コンプスの、サムオブパーツはあてにならない

これも怪しげなバリュエーション手法なのですが、Sum of Partsといって、複数の事業セグメントを分けて、それぞれのセグメントごとに比較対象企業をつくり、夫々のセグメントのターゲット価格の和として妥当なバリュエーションを出そうという試みをすることがあります。

この”サムオブパーツ・コンプス”も、気持ちはわかる手法ですが、一社でも比較対象企業を正しく揃えるのは難しいのにその何倍もの難しさが厳密には生じる(しかし適当に選ばれることも多いので、難なくコンプス対象が揃えられることも多い)上、これら多事業部間のシナジーも(もしもあればですが)反映されないので、これもあまりあてにならないアプローチだと思います。(ただし、一ひねりあるので、不慣れな事業会社のクライアントさんは”ほほーう”と、不当に納得されたりするのですが。

4・コンプスの、比較対象企業が少なすぎる

これは新しいビジネスをバリュエーションするときにぶちあがる問題ですが、そもそもユニークなビジネス過ぎて、比較対象企業があまりない場合があります。こんなとき、頑張ってこじつけて3-4社引っ張ってきますが、そもそも比較対象企業というには無理のある企業を、しかもそんな少ない企業のバラバラなバリュエーション数値を並べて中央値をとってもあまり意味がなく、平均にもあまり意味がないのに、一生懸命数字を捏ね繰り回すパターンです。努力のわりに、あまりバリュエーションの根拠として、頼りになる数字が出てくるとは思えないでしょう。

5.コンプス企業の、質的な違いが反映されない

これはコンプスに限った問題点ではありませんが、仮に同じような事業、市場環境、ビジネスモデルでも、単純にPERやPBR、EV-EBITDAを比べてどちらが割安、割高などとは議論できないのです。そこには経営陣の質の違い、社員の質の違い、ガバナンスやコンプライアンスの質の違い、従業員のエンゲージメントレベルの違い、将来戦略の違い、レピュテーションの違いなど質的な違いが反映されていない為です。


それでもコンプスには、一定の意味がある

これらのコンプスの本質的な問題点は他にも探せばたくさん出てくるのですが、かといってまったくもってコンプスがあてにならないというわけではありません。というのも、バリュエーションとはいわば宗教みたいな側面があり、”皆、それを信じている限り、預言が現実になる”世界だからです。

つまり、参加ししている主要な投資家がなぜか、A社の比較対象企業をBDEF社だと信じ込み、そのBDEF社の平均PERと同じ水準が妥当だと信じ込めば、その値段に株価および企業価値が収束するからです。


ここからうかがえるWisdomは、バリュエーション指標は結局のところ、それで本質的価値を測れるものではないが、いろんな宗派の一部の考え方を参考程度に知れる、という側面があるといえるでしょう。


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