東京大学 法学部 Hさんより質問
私は、業界ベースではコンサルを第一志望としてそれ以外は考えていないが、その中でどのファームを第一志望とするか、についてはまだ決めかねている。
そこで、BCGやマッキンゼーのような大規模ファームと、ADLのような小規模ファームを比べた場合のメリット・デメリットについてお伺いしたい。
特に、 大規模ファームと小規模ファームに受かって、あえて小規模ファームを選ぶことのメリットはどこにあるのか、という点について詳しくお聞きしたい。
講師からの返答~小規模コンサルファームの4大メリットとは?
大規模、小規模で分けることはこれも一概に言える話ではないですが、いくつか述べさせていただきます。
まず第一に、日本でのオペレーションが比較的小さいファームは、シニアの数も少ないので
早期にプロジェクトに全面的に参加させてもらえる可能性があります。(小規模所帯なりにケースが十分あればの話ですが。)中間層が少ない程、下作業以外に参画できる機会が多いのは事実です。
第二に、チームが小さいのでセクターなどで分かれておらず、幅広い経験をさせてもらえるのも、小規模ファームならではといえるでしょう。特化できない分、ジェネラリスト養成という意味ではメリットを感じることもあるでしょう。
第三に、小規模コンサルファームはアットホームなので、いわゆるアップアンドアウトもほぼありません。解雇リスクの低さも、小規模ファームならではのメリットでしょう。(ただし逆にいえば、向いてないのに長らくコンサルタントとかマネジャーでくすぶっている古株がいるのも、小規模コンサルファームあるあるです)
第四に、小規模でアットホームカルチャーなため、人当たりがソフトでいわゆるいいひとが多いのも、小規模な戦略コンサルファームに典型的にみられる特徴です。そしてあまり条件闘争に厳しい人は来ないため、草食系・農耕系と称される人が相対的に多くなります。
小規模コンサルファームの4大デメリットとは?
デメリットとしては第一に、プロジェクトの売り手が比較的少ないので、クライアントの産業やプロジェクトの種類が大手ファームに比べて限定される可能性はあります。
このことは、経営コンサルファームなのに、コンサルファーム自体の売り上げや組織が成長しないという、ちょっとクライアント向けに説明しずらい、恥ずかしい問題につながりがちです。
また、少人数で多様なケースを回すのでジェネラリストとしての良いトレーニングになる半面、専門プラクティスがあるわけではないので、専門性が弱い傾向にあります。
第二は、新卒時での基本的な能力や、仕事の大変さは大手トップファームと大して変わらないのに、給料が大手ファームの8割から半分以下の水準が多いことです。これはひとえに、プロジェクトの受注金額単価が低いからです。
新卒一年目は差が100万程度ですが、これが上に行くにつれて、下につく人数が違うので、給与の差も大きくなっていきます。ADLなどは小規模でも外資系なのでグローバルサラリー水準がありますが、国内系のCDIなどですと、ベンチマークが国内企業になるのか、より一段と給料は低まります。
例えば日系の独立系小規模ファームで一定の存在感があるCDIでは、主任と呼ばれる新卒2年目程度までは、ベースが500万前後でボーナスも一割程度です。
昇進した副査と呼ばれるランクで、700万弱の年収。新卒7年目からの主査と呼ばれる、2段階昇進したレベルで800万~1200万前後で、ボーナスは最大30%前後まで上がりますが、大手外資コンサルに比べれば半分以下の水準です。また国内系ですと国内の業績がもろに給与プールに響くため、業績に連動してタダでも高くない給与が、カットされることもあります。
第三にあげられるデメリットは、やはり認知度の低さです。業界内部でしか名前が知られていないことが多く、これが受注金額の低さ、給料の低さ、優秀な人材の退社に繋がります。
第四にあるのが、後継者問題です。総じて古株のマネジメントがお互いを守りあっているので、外部から新しい血を入れることに抵抗感があるケースが多く、結果的に次世代経営陣がいつまでも育たない、という問題が挙げられます。
また高齢の古株コンサルタントが長らく経営を牛耳っているので、新しいデジタル化の波に対応できず、コンサル業界の激変に対しても有効策を打てず、相対的な業界ポジションが低下していくファームも多々あります。