コンサルティング業界の仕事はきついが、コンサルになるには過度の心配は無用!
東京工業大学 Hさんより質問
進路に関して不安に思うのが、コンサルティング志望ではあるが、その職業が自分のキャリアとしてどういった位置づけになるのか?ということです。
もちろん自立したビジネスパーソンになりたいということと、社会でファシリテーターとして活躍し、様々な業務の知見を得たいという目的がありますが、変化が激しい社会状況で、そういった立ち居地を維持していくことの動機がどこまで続くのかということは志望する中での悩みです。
また、コンサルティング業界には、新卒からも、中途採用からも採ることもあり、一つの職業をある種専門的に何年間かやられた方が入ってきて、活躍しているという現状も鑑みると、✔新卒として、この業界に入って、どれほどの業績をあげられるかという不安があります。
また、✔自分の視野を広げる手段をどのように構築していくのかというノウハウ面の心配も強いです。
コンサルは自分のキャリアの「モラトリアム」「基礎体力強化期間」という位置づけが多い
いい質問である。コンサルは総じて汎用性が広いスキルを学ぶので(知識ではなく考え方やプロジェクトの進め方を学ぶため)、キャリアの”基礎体力強化期間”という位置づけかつ、”何をやりたいか絞るためのモラトリアム期間”という位置づけになることが多い。
一つ目の「様々な業界の知見を得ながらファシリテーターとして活躍するという立ち位置でのモティベーション継続期間」だが、端的に答えれば、その動機が続かなくなるから、ないし知見を得るだけでなく実行したいという動機が生じるため、数年で転職する人が多いといえよう。
ただ転職と言ってもコンサルトップファームで若手時代数年過ごせば、そのスキルや動き方は様々な業界で応用できるので、後ろ向きの撤退ではなく前向きの転職になることが多い。
したがって、「コンサルという立ち位置へのモティベーションがずっと続かないのでは」という点は、過度に心配することはない。そもそも、モラトリアムという位置づけだけに、いつまでもモラトリアムでいるほうが、”モラトリアム自体が好き”というタイプでない限り、問題であろう。
新卒から勤め上げてパートナーになるケースも多い~ファームによっては実務経験を積む機会も増加
二つ目の質問だが、入社直後の新卒の役割は中途で入ってくる人と違うのでご心配なさらず。
逆に中途転職組はコンサルプロジェクトの価値の出し方が、コンサルとしての動きではなく「業界経験者としての知見」に頼りがちなので、新卒だからこそ最初にインストールされるOSが”コンサル脳”になれるというメリットもあるのである。
実際に多くのファームで、新卒からそのまま勤め上げてパートナーに昇進している人がいくらでも存在する。今では常駐案件やエクスターンシップ、業界特化型コンサルキャリアや多様な契約形態のコンサルプロジェクトなど、コンサルファームによってはより実務的な経験を積めるようにもなってきているのだ。
コンサルという仕事は、視野が広がるようで、意外と狭まることも?
三点目の”自分の視野を広げる手段”だが、様々な産業を最初の数年は経験できるので視野は広がるが、その後ジェネラリストパスか、産業特化型に大規模戦略ファームであればキャリアパスがわかれることが多い。
ちなみにコンサルというと多様な業界を見れて視野が広がるというイメージがあるが、実は長期プロジェクトの常駐案件にアサインされたりすると、コンサル志望時に思い描いた仕事と全く違う仕事をすることにもなりかねない。
かつ、コンサルファームというやや同質の人材が集まり、かつクライアントからもコンサルに求められる役割だけを繰り返していると、意外と視野が狭まって行ったりもする。
そんななか、視野を広げるのに最も効果的な方策として、海外トップMBAに留学するのも一案だ。
世界各地の無数の業界からくる友人たちに触れて刺激を受け、MBA卒業のタイミングで得られる”幅広い業界から職業選択”する機会を検討するのも、ペコパ的に言えば「悪くないだろう」。
コンサル就職・転職を過度に心配することなかれ
なお東京工業大学という生真面目な人が多い大学の性格が出ているのか、あなたは極めて心配性で、不安と心配をし過ぎである。別にコンサルに数年入って”えらいことになってしまった!”みたいな人はほぼいないので、まず肩の力を抜いていただきたい。
よく言われるのが、①”コンサルは実行に回れないし、利益に対する責任もないし、その痛みや努力、実務的な泥臭さを経験できないし、あくまで他人事であるため、時には自己満足のレポートで終わる”というものだ。
また②身につけた知識が、“いざ自分でやれといわれたら、実行のスキルは自分にあるのか、、、”という不安につながったりもする。
また③予算に対する最終的決定権もなく、給与的にも新卒時は相対的に高くても、35とかになれば商社の方が高い、という心配を持つ方もいらっしゃるのではないか。
しかしご心配なく。これらは2000年代初頭の戦略コンサル勃興期のお話であり、2020年代のいまや、常駐でクライアント側の名刺もって中にはいってガリゴリ実行側にも回る”こう旧人材派遣業”化しているところもある(ただし、これが上流の戦略策定に参与できない苦しみにもつながっているのだが)。
また中にはさらに踏み込んで、クライアントが実行の約束を契約書でサインしないとコンサルプロジェクトを引き受けず、おまけに生じた利益の数%をフィーとしてもらうという利益リンク型のコンサルに移行しているところも出てきている。(ただ確かに大半は、戦略一緒に考えてレポート渡すのが仕事ではあるが。)
コンサルファームに入るだけでなく、入社後に自分が活躍・貢献できるのかを真剣に考える姿勢に拍手喝采を送りたい。ただ、コンサルに入って得るものが大きかった人のほうが、コンサル転職後に後悔している人よりよっぽど多いので、そう過度に心配なさらないようにして頂きたい。
(まぁ、心配性の人がコンサルすると、クライアントに怒られないよう人一倍、クライアントが気にしないところまで働きすぎてくれるので、一緒に働く人は労働量が増えるが、クライアントにとっては頼もしいものである。)